システムソリューション事業 2020.02.17

事業と人生に迷ったら、「ブルーロック」を読めばいい

サッカーマンガ「ブルーロック」がおもしろい!
ただエンターテイメントとして面白いだけじゃなくて、企業戦略論で頻出する「ケイパビリティ」の話と対応させると、また違った読み方ができて面白いですよ、という紹介です。

こんにちは。自称デジタルハイパーメディアソリューションプロデューサー略してシンガーソングライターの坂井です。突然ですが、今日は最近読んだ面白いマンガの話をしようと思います。

じゃーん

その名も、ブルーロック。週刊マガジンで絶賛連載中。現7巻、そう、たった7巻です。あなたの経済力なら今からでもさくっと追いつけますね!

サッカーかよ!と思ったあなた!

大丈夫です、サッカーあんまり関係なく面白いです。ハイパーおもしろいです。その理由を語りましょう。そして語らいましょう!

BLUE LOCK=青い監獄。特設トレーニング施設に閉じ込められた高校生FWたちの、サッカーサバイバル成長物語。

さて、まずはざっくりどんな漫画かをお話し。

ブルーロックとはすなわち「青い監獄」。なんと物騒な名前でしょう。

その正体は「外界から断絶されたストライカー育成施設」であり、「世界一のストライカーを作る実験プロジェクト」です。プロジェクトリーダーにして、ストライカーを育てるコーチ的な役割を担うのは「絵心甚八(エゴジンパチ)」。見た目はほぼ死神です。涅マユリ的な方の死神。

彼は全国から将来有望なストライカー候補生300人をあつめ、彼らに向かってこう言い放ちます。

ここでは、世界一のストライカーを創る実験をする
ここでのサバイバルに勝ち抜いた最後の一人は、必ず世界一のストライカーになれる

この言葉を受けた高校生たちは、突然で過激で強引な展開に戸惑いを覚えつつも、ブルーロックプロジェクトへの参加を決意、それを勝ち抜いていく中で、着実に一歩ずつストライカーとしての精神と実力をはぐくんでいく…ざっくりとはそんなマンガです。

まあその辺はだいたい第一話に書いてあります。

まあ、ここまでは、というかだいたい一巻の内容くらいまでは、話題性狙ってちょっと表現を過激めにしただけの少年スポ根漫画かな…?と思うわけですが、これがまた読み進めていくと全然違う。全然違うのです。

論理と思考によって合理的・必然的に成長する主人公。根性論皆無、ご都合主義皆無。

このブルーロック。スポーツ漫画であり、少年漫画でありながら、決していわゆるスポ根ではない。そこには根性論も、偶然の奇跡もない。ボールは友達!からのスカイラブハリケーンでゴールネットブッチィみたいなこともないし、バネにぎゅってされそうな養成ギブスからの大リーグボール2号!でスパーン!なんてことも一切ないのです。

主人公たちは、コーチから罵声を浴び、与えられたトレーニングを一つ一つこなしながらも、そこに込められた意味、意図を必死で考え、捉えながら成長していきます。スポーツ漫画とは思えないほど、とにかく思考の描写が多い。努力、特訓の前には必ず徹底的な思考があり、そして非常に合理的な道を選び、必然的に着実に成長していく。この繰り返しが本当に素晴らしいのです。

サッカーマンガでありながら、サッカー論の出てこなさったら、もう。

しかもいっそう面白いのは、サッカー漫画でありながら、サッカー論がほとんど描かれないこと。

サッカーの戦術がどうとか、その戦術のためのポジショニングとか役割がどうとか…と言う話はほとんど出てきません。コーチの口から出てくるのはあくまで、サッカーを題材にしただけの、「個人の成長のための、戦略論」。

それに沿って成長していく主人公たちの姿、やり方は、あらゆる読者にとって、自身の状況と重ねることができるようになってます。そしてそれは、そう、このブログのタイトルの通り、「事業成長戦略」的なものにも重ね合わせることができそうだなと、私は感じたわけなのです。

というわけで、そんなブルーロックの面白さと、コーチの名言にフォーカスしつつ、その「成長論」を少しだけ具体的に紹介させてください。


ここからは少しだけネタバレ含みます!!

子曰く、「己だけの武器を見極め、磨き、組み合わせて方程式を作れ」

と言うわけでこのコーチ、エゴ。とにかく名言が多い!アリストテレスかってくらい多い。口を開けばすわ名言。街を歩けば名言がついてくる。

序盤、一次試験のエゴコーチは、「自分の能力を知り、磨き、組み合わせる」と言うことに徹底的にフォーカスします。

・ 己だけの武器を見極めろ
・ その武器を研ぎ澄まし、突出させろ
・ 武器を組み合わせ、方程式を作れ。ゴールに再現性を持たせろ

この言葉を受けた主人公は考えます。というのもこの主人公さん、フィジカルやテクニックといったわかりやすい武器は持ってません。周囲に自分より筋肉モリモリマッチョマン、スーパードリブルチョコマカマン、超速スピードトム・クルーズなど、ライバルがうじゃうじゃいるのです。

だからこそ、主人公は自身の武器は何だろう、と常に考えながら試合をこなします。チームメイトやライバルとのプレイ、コミュニケーションを通して、数試合過ぎた後、ようやく主人公は、どうやら自分が優れているらしいポイント、すなわち武器を見つけ出します。

卓越した空間認識能力により、ゴールの匂いをなんとなく察知できる

つまり、どうやら人より広い視野があり、周りの選手の動き、ボールの位置がよく見えているらしい。それによって、ゴールの匂い的なものを感覚的に掴む力があるらしい

・・・あまりピンとこない気もしますが!でも多分、最初はそんなもんなのです。主人公自身もそこまで確信を得たわけでもなさそうでしたが、それでもその仮結論に至った主人公は、それを軸に、戦い方、方程式を組み立てます。

・ 敵チームの動きを把握し、パスカットでボールを奪う
・ 味方の動きを把握し、適切な指示・パスを出し、味方を動かす
・ 敵味方の一手先二手先の未来を読み、スペースに走り込んで自らゴールを決める

すると、そのためにプラスで必要な能力、鍛えるべき能力も見えてきます。

・ 見えたチャンスを逃さたないために、人一倍のスタミナをつけておく
・ 見えた未来に他人が追いつく暇を与えないように、ダイレクトプレーの精度を上げる

自らの武器(=他人より優れている点)を見つけ、それをゴールに結びつける組み合わせ、方程式を見つけた。あとはこれらの能力を徹底的に研ぎ澄ます練習を重ねることで、主人公は本当の意味で、突出した力を身につけていきます。

その中でも特に、

空間認識能力 × ダイレクトシュート

の方程式の発見は、今後の主人公の活躍を飛躍的に広げることになります。

「武器=ケイパビリティ」と置き換えると、そのまんま企業戦略の話になる。

ここで一冊、難しい方の本も紹介しておきます。

ざっくりとは、「ケイパビリティ(※)戦略」の本です

※ ケイパビリティとは
企業能力、組織能力などと訳されます。↑の著書の中では、もう少し具体的に、「(企業特有の)プロセス、ツール、知識、スキル、組織設計を巧みに組み合わせたもの」と定義されています。

戦略と実行を結びつけるものはケイパビリティであり、特徴ある自社だけのケイパビリティ体系を持つことによって、他社との違いを明確にし、競争優位に立てる…そんな本です。

ブルーロックの感じと似てると思いませんか!ブルーロックが特に企業戦略っぽいというか、特に重要だなと私が思ったのは、ふたつ。

① 答えは自分(自社)の中にしかない

ブルーロックの主人公の言葉を借りると…

俺にもっとフィジカルやドリブル力があれば…いや、ちがうな、答えは自分の中にしかない

先述のとおりこの主人公は、突出したわかりやすい武器がありませんでした。そんな中で一流のライバルたちとの競争にさらされるわけですが、そんな状況でも、安易に周りのライバルの真似をしたり、自分に合ってない、付け焼き刃の武器を得ようとはしなかったのです。

「STRATEGY THAT WORKS」にも、以下のような記述があります。

ケイパビリティを構築する場合、業界内のベストプラクティスを取り入れたり、機能面のエクセレンス(※)を獲得したりすることが最善策だと思われがちだ。しかし従来型の通念にとらわれない企業は、自社をその他の企業から際立たせるような、独自のケイパビリティを設計・構築する

たとえある事業セグメントに陰りが見えても、見つけた機会を片っ端から追い求めたりはしない。その代わりに、現有もしくは今後強化できるケイパビリティに基づいて、かつ権利が得られる成長領域を探すのである。

※ 機能面のエクセレンス
ある機能における研鑽、効率化などを追求すること、と解釈してます

まさに。まずはどうあれ、今の自社の強みを徹底的に考え、見極め、鍛え、他社との違いを際立たせることこそ、その先の戦い方を考える第一歩だ、と言っている…のだと解釈してます。

安易に他人、他社の真似をしてもそれは、うまくいっても同質化にしかならない、優位にはならないと。

マンガでも大体、コピー能力持ってるやつは噛ませにしかならないですもんね!コピーでかっこいいのは黄瀬くらいです。

②相互に強化しあう武器の組み合わせを見つけるべし

二つ目は、ブルーロックの主人公で言うところの「空間認識能力×ダイレクトシュート」です。

コレのすごいところは、ゴールに直結する組み合わせであると同時に、互いに強め合う武器の組み合わせである、ということです。

「STRATEGY THAT WORKS」にも以下のような記述があります。

ケイパビリティ体系とは、自社と他社との違いを明確にし、価値提供を実現できるようにする、3〜6つの特徴あるケイパビリティの集合体である。これらの極めて重要なケイパビリティは単独では機能しない。いずれも、企業の差別化に不可欠な相互に強化し合う体型の一部なのである

ケイパビリティの組み合わせこそが「秘伝のソース」なのだ。

つまり、まずひとつ自社の強みを見つけたら、それと相互に強め合う幾つかの武器を見つけたり、身につけたりする(=ケイパビリティ体系の構築)ことによって、自社だけの価値提供(=価値を提供するメカニズム)を作るべし、ということだそうです。

STRATEGY THAT WORKSの中では、いくつかの企業の「秘伝のソース」すなわち、「ケイパビリティ体系」と、「価値提供のメカニズム」が紹介されていました。

でも、同じ戦い方が通用し続けるとは限らないんだぜ

さて、武器の組み合わせと方程式を見つけて順調に勝ち進んだ主人公ですが、ついに一つの壁にぶち当たります。それは。

一対一で勝てる力が要る…!

そう、空間認識能力とダイレクトシュート、これはあくまで他のプレイヤーとの関係、連携によって発揮される能力なのです。ブルーロックの二次試験、2on2のミニゲームにおいて、主人公はその課題に直面します。さらなる進化、覚醒を強制されるわけです。

またしても主人公は考えに考えます。今までの自分のプレイ、敵のプレイを思い出して、考えに考えます。その結果主人公の脳がパーンってなって死にます。嘘です。あくまでマンガ上の演出です

さて、周りを観察し、自分を見つめ、考えに考え抜いて得た答えは…!

「死角をついた、オフ・ザ・ボールの動き」

1対1、は何もボールを持ってから対峙することだけではない、パスを受ける前に、相手の死角に走り込み、有利な位置でパスを受ける、そうして相手を振り切ればいい…!

とのこと。

なるほど?

と思ったかもしれませんが、重要なのは、これも荒唐無稽な思いつきではなく、自身の能力の延長を探った結果であるということです。

空間認識能力を一歩進めて、対峙した相手の視線の動き・重心移動をも把握、相手が絶対に追いつけないスペースを見つけて走り込み、パスを受けてダイレクトシュート、という、これまた無敵コンボ(新しい方程式)を生み出して、フィジカルオバケとの1on1に勝利するわけです。

まあ、実際はそんな、思いついたからっていきなりそんなにうまくいくわけねーよ!とも思いますよね。さすがに、そうだと思います。ただ、ブルーロックの中では、その主人公の能力を、敗れたライバルはこのように説明しています。

「お前は、変わることを恐れない。いつでも自分を壊す覚悟で戦う、適応能力の天才だ」

ふむ。

さらなる進化へ、「自己変革能力=ダイナミックケイパビリティ」

ここでこれまた、ケイパビリティ論の本を一冊紹介させてください。

ここには、ケイパビリティを軸にすることは、ときに硬直性の要因になる、つまり、ケイパビリティに固執しすぎると、それは市場からおいていかれる、失敗の原因になりかねない。状況を感度高く感じ取り、ケイパビリティを再配置、再構成する能力(=ダイナミック・ケイパビリティ)が重要だ、ということが書いてあります。

例として挙げられているのは、富士フイルム。フィルム業界といえば、デジカメの到来によって破壊的な変化が訪れたであろうことは、想像がつきますね。私もフィルム業界に詳しいわけでは全くありませんが、さぞピンチだったことと思います。そこで富士フイルムは、化粧品・医療業界に参入するという驚きの選択をします。比較的有名な話なので、ご存知の方も多いかと思いますが。

それももちろん、思いつきや勢いで選択したわけではありません。元の強みであった「フィルム開発技術」のうち、「フィルムの劣化防止技術」を突き詰めると、それは「コラーゲンの酸化防止技術」であり、「肌の老化防止技術」としても転用できるのでは…といった、自社の武器を軸にした変容を実践しようとしたのです。

これこそが、「ケイパビリティを再配置する力=ダイナミックケイパビリティ」、というわけです。ブルーロックの主人公さんも「ダイナミックケイパビリティの天才」と言えるかもしれないですね。

己を知ることこそが「覚醒」である

というわけで、ブルーロックは非常に学ぶことの多いマンガだよ!!という感想、提案でした。

最後にもう2つ、エゴコーチの名言を。

覚醒とは、思考と経験の蓄積の上に起こる、学習だ。失敗と試行錯誤を重ね、それでも勝とうと極限に立ち向かう時、バラバラだった成功へのピースが噛み合って、個人は開花する。つまり覚醒とは、個人(オマエ)が己を学習する瞬間だ。

企業にしろ人間にしろ、道に迷ったり、どうしたらいいかわからない五里霧中状態に陥ることはよくあることだと思います。そんな時は一度、自分のことについて真剣に考えてみてはどうか、ということを、これらの本は教えてくれているのかなと思います。私も正直、自身のキャリアとかについて考えることも多いですが、ちょっと改めて、自身の能力や強み、価値提供を考え直してみようかなと思っていますし、周囲にもそういった助言をしたり、覚醒体験みたいなのを提供できたらな…と思ったりしています。

まあでも、そう、最も重要な事、強調しておかなければいけないことは、ブルーロックはシンプルに、めっちゃ面白い、ということです!!私みたいなしょうもなくややこい解釈はあくまでおまけです、小難しいこと考えずに、ぜひ楽しく読んでいただけたらと思います。

ただ個人的には、自分の考えを整理してくれたというか、軽く世界の見え方を変えてくれた感もあるので、このような形で紹介させていただきました。エゴコーチの301番目の弟子として、教えを胸に人生頑張っていきたいと思います。(本当)

今回は以上です!面白い漫画あったらまた書きますー!

  文:坂井 翔一(システムソリューション事業部 プロデューサー)
twitterやってます

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引用・参考文献:
表紙:Photo by Sven Kucinic on Unsplash

なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか―――高収益企業になるための5つの実践法
ポール・レインワンド (著), チェザレ・メイナルディ (著), アート・クライナー (その他), PwC Strategy& (翻訳)

成功する日本企業には「共通の本質」がある 「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学
菊澤 研宗 (著)

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