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どうも。2020年のTitansシーズン2が待ち遠しいキノシタです。
近年デザイン思考やデザイン経営など今までクリエイティブを担っていた職種の一つであるデザイナーの思考法や技巧が、その他の職種にまで浸透してきている流れがあります。
これまで、上流工程である要件定義や戦略策定などはロジカルなフレームワークを用いて「論理的」に解くことが通説でした。
しかし、「共感」や「感情」などロジカルなものではなく「心理」的なものも重要視する流れになってきています。初めからそうであったとも言えますが、2010年代のSNSの発展と共にモノやサービスに対する「感情」にも重きを置く設計がなされてきています。
さらに直近の数年を振り返ってみてもvine(これ覚えていますか?)やtiktokに代表されるショートムービーアプリやVtuber、Youtuber、ニコ生(見てる人いますか?)に代表される配信アプリなどサービスやモノあるいは人と人との距離が相対的に近づいてきています。
それは、元来人が持っている「承認欲求の獲得欲求」をより強固にするまでになっています。
この流れからビジネス上でもUIやUXという言葉を聞かない日はありませんし、どの職種や立場においてもブランディングなどユーザーの「心情(信条)」を考慮した(あるいは意図的に狙った)サービス設計を考え続ける必要があります。
今回は、ある種フレームワークとなっているUX5段階モデルと共にユーザービリティを上げるサービス設計について考えていきましょう。
UX5段階モデルとは、ユーザー体験に影響を与える要素を5段階で分類したものです。
とりわけ新規サービスの検討段階に向いているというわけではなく、一機能の改修といった場合においても有用な思考法の一つであると認識しています。
具体的にどのような5段階になっているかと言いますと、以下の図をご覧ください。
下から上に向かって抽象から具体になっていくのですが、最下層から見ると、戦略、要件、構造、骨格、表層という5段階に分かれています。各層の内容とそこでの手法を見ていきましょう。
戦略フェーズでは、サービスをどう戦わせていくかを考えるフェーズです。
つまり、そのサービスが誰に対してどのような価値をどのようにして届けるかを決めるということです。
WEBサイトでいうと、サイトに訪れる人が達成したい(させたい)目標は何か、サイトを訪れることによりどのような心理変容が起こるのか(起こさせるのか)を考えるということです。
今後の4階層を作る上でも一番重要なフェーズといっても過言ではないでしょう。
そのため戦略を決める上では、ユーザー側の視点、ビジネス側の視点が必要となります。
ユーザー側では、どのような価値をユーザーに与えるのかというところが主題となります。
そのために活用できる手法としては、ユーザーインタビューやアンケートです。
クライアントワークの上では、クライアントに代わり実際のユーザーにインタビューするケースやクライアントに対してヒアリングを行うことになります。
これらの目的は、ユーザーが求めている価値や達成したい目的、そしてユーザーが普段どのような行動を取っているか(あるいは取りそうか)を知ることにあります。
それにより、ユーザーインサイトを捉えたサービスのブランディングやコンセプト作りが進められるようになります。
ビジネス側では、どのようにして価値をユーザーに届けるかというところが主題となります。
そのために活用できる手法としては、ビジネスモデルキャンバスがあります。
もちろんマネタイズなどビジネスモデルを決めていく必要もありますが、あくまでお金の流れになってしまうので、各ステークホルダーからチャネルまでより詳細に把握しやすいビジネスモデルキャンバスを使用することが共通認識を持ちやすく良いかと思います。
ビジネスモデルとは、ビジネス上の以下の9つの要素を1枚の絵でまとめることです。
詳細は、参考文献をご参照頂くことにして、重要なことは新規サービスが軌道に乗り、運用段階になったとしても都度これらをチューニングする必要があるということです。
ユーザー層やテクノロジー、時代の変化に伴い、9つの要素がコロコロと変わります。
そのため、都度合わせていく必要があります。KPI管理だけではこのような要素の変遷に気が付かないため頭の片隅にでも置いておく方が望ましいでしょう。
要件フェーズでは、サービスの仕様(機能)を決めていきます。
戦略フェーズで設定したコンセプトやブランディングに沿った機能群を考えていく必要があります。
このフェーズで使える手法は、ユーザーストーリーマッピングです。
ユーザーストーリーマッピングとは、書いて字のごとくユーザーがサービスを通じて体験するストーリーをマッピング(視覚化)しながら作り上げていく手法です。詳細は、参考文献に譲ります。
ユーザーストーリーマッピングは、大きく分けて3つの構成で作成可能です。
①バックボーン
②ナラティブフロー
③ユーザーストーリーの詳細
バックボーンでは、ユーザーストーリーの骨格を描きます。ここでは、サービスのメイン機能を挙げます。
ナラティブフローでは、バックボーンで上げたメイン機能でできることを時系列に並べて一連のストーリーとして成り立っているかどうかをチェックします。
ユーザーストーリーの詳細では、さらに詳細な機能を優先順位や段階的リリースを見越して洗い出していきます。
ユーザーストーリーマッピングのメリットとしては、全体最適を図れることです。
部分最適された機能群が必ずしも全体最適ではないように、大局的にサービスの機能群を眺めることによって必要可否であったり、実は必要な機能が漏れていたなど発見にもつながります。
構造フェーズでは、これまで作り上げてきた機能群を作り上げていくフェーズです。
つまり、機能群のつながりとデータ構造の設計を行っていくフェーズです。
どのようなテーブルを用意し、機能群にとって必要な情報は何かを一つ一つ繋ぎ合わせていくことになります。非常にテクニカルで難易度の高いフェーズになります。
このフェーズでは、エンジニアの力量に大きく依存することにもなりますが、システムやデータ構造にも知見があるディレクターやデザイナーがユーザーストーリーで決められた機能群の繋がりを紐解いては繋げていく手助けをする必要があります。
具体的な手法としては、OOUI(オブジェクト指向UI)がそれにあたります。
プログラミングをした人なら誰しも知っているオブジェクト指向ではありますが、画面の情報設計も同様に考えていくことでデザイナー/ディレクターとエンジニアへの情報の引き渡しがスムーズに進むと思います。
骨格フェーズでは、UIを組み立てていくフェーズです。
ようやくデザインらしい話になりましたが、ここでは画面設計を主に進めていきます。ナビゲーションをどうするのか。何をどこに置くのか。
このフェーズで役に立つ手法は、プロトタイピングです。
agexでは深く根付いている手法ですが、ユーザーストーリーに基づいたプロトを使用してUIがこれまでに設計してきたものを達成できているのかを試験します。
プロトタイピングやUIデザインに関しては、巷に良書や記事が膨大にあるためあまり触れませんが、これまでのフェーズと同様に仮説検証を通じて作り続ける必要があります。
戦略フェーズが一番重要と書きましたが、それと同等レベルでこのフェーズも重要なものとなります。
色や見た目といったデザイン的なものも含めてプロトタイピングをする場合もありますが、骨格フェーズではワイヤーフレーム(家でいうところの間取りにあたる)で検証をしていくため、どこに配置されるかもユーザー体験にとって非常にセンシティブなものになります。
次の表層と併せて考えられるケースも多く、色が悪いのか配置が悪いのかなど混同するケースがあるため、その場合はモノクロにして検証してみるなど一次元落とした場合で考えると検証しやすいかと個人的には感じています。
最後にくるのはこちらの表層フェーズです。
ここでは、カラーなど「見た目」を作り上げるフェーズとなります。
こちらの重要性は膨大に語られているため割愛いたしますが、やはり意識すべき点は戦略フェーズで定めたコンセプトやブランディング、主目的を達成するためのインターフェースとなっているかということです。
ハイブランドなのに安っぽいデザインや地域性や原点が異なるタイポグラフィーでは、かえってブランドイメージの棄損となったりするケースもあります。
そのため、「カッコよさ」や「オシャレ」を前面に打ち出す必要はなくあくまで目的やコンセプト、ブランディングが満たされているインターフェースとなっているかを主眼に重点的に検証を行います。
UX5段階モデルを改めてまとめます。
①戦略②要件③構造④骨格⑤表層の5つのフェーズでした。
またそれぞれのフェーズで使われる手法は以下の通りでした。
①ユーザーインタビュー/ビジネスモデルキャンバス
②ユーザーストーリーマッピング
③情報設計
④プロトタイピング
⑤UI設計
あくまで一例としてのUX設計手法です。まずはこのUX5階層モデルを型として行っていくだけでも説得力のある、説明しやすいUX設計になってくるかと思います。
さらに個々人がここに他の手法を組み合わせていくことでUXをさらに深堀して最高のUXを体現するサービスを作り上げていけるといいですよね。
UI/UXやデザインというのはどうも「センス」で語られる場面が多くなります。それはアーティスティックな印象を感じたりするからなのでしょうか。ただジェームズ・ヤングが述べている様に、新しいものとは既知と既知の新しい組み合わせであると思います。
その意味で考えると「センス」というのも、既存のものの新規の組み合わせ方法を出現させる能力と考えられます。それはインプット量に依存するため、様々なものに触れることで獲得できる後天的な能力と言えるでしょう。
何事も「センス」の一言で片づけることなく、新たな組み合わせ方を一つ学べたとしてインプットしてあげる方が生産的で後生何かしら役に立つかもしれません。
ここまでロジカルにユーザー体験を設定していく方法を書いてきましたが、大事なことはこのロジカルな設計にひとつ「想い」を足してあげることだと思います。
好きなことを楽しそうに話している人の好きなことってなんだか自分も試してみたくなりますよね。
あくまでサービスは無機物ではなく様々な人の「想い」が乗る有機的なものです。ロジカルとセンス(想い)を乗せたサービスづくりをこれからも行っていきましょう。
それでは、また。
UXの5段階モデルにおける各段階での具体的なデザイン手法とは?
簡単!楽しい!5分でわかるユーザーストーリーマッピング(User Story Mapping)
エンジニアが最高のUIをつくるためのプロトタイピング方法まとめ
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