SharingKyoto 事業 2019.10.24

【インタビュー】Vol.5 安河内 博 さま(下京区 区長)

京都やインバウンドで活躍されている方にインタビューした内容をご紹介するこのコーナー。今回お話を伺ったのは、現在京都市下京区の区長を務めておられる安河内 博(やすこうち・ひろし)さまです!下京区は今年3月に「梅小路京都西駅」が開業し、今年で140周年を迎えるなど、今まさに大注目のエリアでもあります。今回はそんな下京区の取り組みや区長が考える京都の理想の姿などについて、お伺いしていきたいと思います!

<今回の話し手のプロフィール>

■ 安河内 博 (やすこうち・ひろし)

昭和38年生まれ、昭和61年に京都市役所入庁。建築指導課、男女共同参画推進課、産業観光局商工部など12の部署を経て、平成30年4月からは現職に就任。地域の持つ魅力を最大限に引き出すことを目指しながら、従来の伝統や文化の継承に加え、若手を中心とした新たな活動への支援に取り組む。

 

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まずは安河内さんにこれまでの経歴や、現在のお仕事内容についてお伺いしました。

──まずは区長の経歴を簡単にお聞かせください。

昭和61年の4月採用で、もう56歳ってことは、33年ですね。最初は建築指導課というところで、都市計画法とか建築基準法とかに関わる仕事をやっていました。その仕事は約3年していて、周りは技術屋さんばっかりだったのですが、そこで可愛がってもらいましたね。マスコット的な感じです(笑)

その後はいわゆる男女共同参画推進課というところにいましたが、ここでの体験は衝撃的でしたね。まさか自分が女性に関する問題を扱うなんて思っていなかったです。当時は「女性市民きょうと」という広報誌を作っていました。名称が少し硬いでしょう(笑)

──そうですね、少し硬い名前に聞こえますね。

それを僕がゼロから作り直して、「E♭(イーフラット)」という雑誌を作ったんですよ。アルファベットの「E(イー)」に、音符の「♭(フラット)」です。雑誌名だけでは何の雑誌か分からないでしょ?男性の方や女性に関する問題に興味がない人にも手に取ってもらいたくて。

──面白い雑誌名ですね。

「E」というのは「イコール(平等)」の「E」で、「♭」は「半音低い」という意味になります。いつの日か半音取れた「E」、つまり平等な世界になってほしいという思いを込めて、創刊しました。「廃刊を目指して創刊する」というコンセプトが面白いと、マスコミの方にもたくさん取り上げていただいて。本当に平等な社会が作れたときに廃刊できる、というのは世界初のコンセプトだと思いますよ。しかも雑誌を作っているのがうら若い(笑)男の子だったので、メディアにはよく取り上げていただきましたね。

──確かに、新しくて面白いコンセプトだと思います。

その後色々な部署を経験しましたが、総合企画局の政策調整課長を一番長くやりました。市全体の色々な政策をうまく調整して、いかにうまく打ち出すかということに関わる仕事をしていました。内閣官房のようなイメージですね。その当時に京都水族館や鉄道博物館の誘致にも携わっていたので、下京区に来て、縁があるなと感じましたね。

それで、一つ前の職場が産業観光局の商工部長です。商工ですから、中小企業と商店街などの商業振興や、伝統産業に関わる仕事をしていました。そこに4年いたので、随分事業者の方や伝統産業に携わっている方とのネットワークが広がりましたね。

──その後、今の下京区の区長としての役職につかれたということですね。

そうです。まだ2年目の新米ですが。

──では、現在の仕事内容について教えてください。

外向きの仕事で言えば、地域で色々な行事が毎週のように行われているので、そこに呼ばれて激励やご挨拶をしたりしています。9月だと敬老の日があるので、敬老会でのご挨拶が多いですね。(※取材は9月末に行いました。)11行政区の中で面積は1番小さいのですが、23学区あるのでね、行事が多いんですよ。防災訓練、夏祭り、盆踊りに、春だったら桜祭りとかね。たくさんあるんですよ。土日はほとんどそんな活動をしています。

内向きの仕事で言えば、約8万3000人の区民の生活に関わる仕事をたくさんしています。福祉介護から、保険年金、市民窓口、戸籍住民票、生活保護、子育て支援・・・そのすべての最終責任者でもありますから。もちろんそれぞれの管理については、それぞれの部門の長がしてくれていますが。あとは打合せやヒアリングも多いです。もうそろそろ来年度の予算も考える必要があるので、そのヒアリングもしています。

──いつお休みされているのかと思うくらい、お忙しいですよね。

カレンダーを見てもらうと分かるのですが、(※スマートフォンを拝見・・・)これがないと生活できないんですよ(笑)日程調整の担当者がいて、全部管理してもらっているのですが、もう隙間がありません。この夏もどこにも行っていなくて。どうしてもという日には、「この日には仕事を入れないでほしい!」と伝えて、お休みをとっています。

──空いた時間には何かされていることはありますか?

音楽が好きで、DJのイベントに行ったりしていますね。
「COLLAGE(コラージュ)」という老舗の小さなクラブがあって、そこによく通っていましたね。今はもうなくなってしまいましたけど・・・立誠小学校の南に一本入ったところにありました。

──では、仕事をする上でのモットーや、大事にされていることはありますか?

やはり主役は区民のみなさまだという意識を忘れてはいけないと思っています。まちづくりの主役はあくまで区民の方々で、全部僕たちだけで動いていても意味がないんです。いかに区民の皆様、地域が持っている力を最大限引き出して、地域が輝くか。そのためにも、僕たちは縁の下の力持ちとして頑張りたいなという意識はあります。

だから、頑張っている人たちを応援したくなるんですね。
たとえば自治会活動、自治連の活動ってものすごく地道なんですけど、みなさま無償の奉仕活動をされているんです。例えば、年末の御用納めの前3日くらいにわたって、消防団の激励にも寄せていただくのですが、寒い中、消防団の詰め所に集まって警戒活動をされているわけですよ。本当に頭が下がりますよ。そういう人たちのおかげで下京区が成り立っていると思いますし、リスペクトしています。

あとは、まちづくりに関わってくれている若い人たちもいて。「シモヒガ140(イチヨンマル)」(※1)もそうですし、西部エリアでも「itonowa(イトノワ)」(※2)さん中心に新しい動きをしてくれたり、「KAGAN HOTEL(河岸ホテル)」(※3)の方々もいたり。従来の自治連とはまた違う、そういう新たな動きもあちこちで誘発していくことで、どんどんまちが面白くなっていくんじゃないかなと思います。この1年色々な方とネットワークができたので、今まさに色々と仕掛けているところです。

※1「シモヒガ140」:下京区誕生140周年を契機に、下京区東エリアの若手事業者によって結成。同エリアの賑わい創出や住民同士の繋がり作りを支援していくために、様々な活動を行う。https://www.facebook.com/shimohiga140/

※2「itonowa」:島原エリアに2015年にオープンした文化交流スペース。カフェや着物専門店、アンティークショップを始めとして、2軒の空き家を「糸」に関するショップやギャラリーが入る。http://itonowa.jp/

※3「KAGAN HOTEL」:不動産型企画会社「めい」が民間企業の元社員寮兼倉庫をリノベーションし、梅小路京都西駅の西側に2019年10月にオープン。若手現代アーティストの住むコミュニティ型アートホテル&アートホステル。https://kaganhotel.com/

──下京区は、若い人たちの新しい動きが多いように感じますが、区長や区としてのサポートがあることも、その一つの理由かもしれませんね。

そうですね。
シモヒガ140なんかそうですね。僕がやろうよって言ったことがきっかけだったみたいで。下京区140周年を契機に勝手連的なグループが立ち上がって。本当に嬉しかったですね。僕から無理に頼んで活動してもらっているわけではないので。

──このエリアには、主体的に動かれる方が多い気がしますね。

類は友を呼ぶというか、「地域をおもしろくしたい」「地域を活性化させたい」と思っている人たちが自ずと集まってくるんだと思います。そういうまちって活気があって良いでしょう。

それに、11行政区の中でも下京区は今一番大きな動きがあるところなんです。
梅小路西駅が3月16日にできましたし、梅小路公園の中に屋外型スケートリンクも12月までにはできる予定です。ホテルと物販の複合施設を含む「賑わいゾーン」も来年度オープン予定ですし、KAGAN HOTELができたりと、梅小路・丹波口界隈も変わっていきますね。開業予定のホテルも4つあります。そして何といっても、京都市立芸術大学の移転。崇仁エリアに2023年に芸大が移転してくるので、若い人たちが集まって変わるでしょうね。さらに北のほうですが、四条室町には京都経済センターもできましたし。そういう新しい施設がどんどん作られているんです。

──下京区は、市内でも今まさに大きな動きがあるエリアなんですね。では今、特に力を入れている活動は何かありますか?

マイナスの面から一つ言えば、持続可能な自治会活動のあり方を考えています。現状では、それを全部担っているのは70代、80代の方々なんですよね。そういう方々がいくつも役を兼ねて何とかまわっているような状況で。それを10年先、50年先まで持続可能にするにはどうすればいいのか。人口減少社会になって、担い手も不足するのは目に見えているので、持続可能な方法を考えないと、せっかく下京区が持っている魅力が失われるかもしれないと思うんですよ。やっぱり人ですよ、最後は。その地域が輝くのも、その地域の人が輝いているからこそですね。

祇園祭もそうですよね。どんどん住宅街がホテルに代わりマンションに代わり、担い手が少なくなって。祇園祭をどのようにして持続させていてるかと言うと、ボランティアを募集して、学生さんに曳き手になってもらったりして継続させているわけですね。同じように、下京区が誇る良き伝統が10年先、50年先まで続くような仕組みを考えていきたいんです。

──これからも下京区のまちの魅力を引き継いでいくためにも、そういった取り組みは必要ですね。

もう一つ力を入れていることとしては、新しい動きをあちこちで同時多発的に誘発して、まちを元気にしていきたいなと考えています。梅小路京都西駅や賑わいゾーンができれば、そこがピンポイントで賑わうのは当たり前なんです。大切なのは、訪れた人ををどう周辺に回遊させるかだと思います。

少し足を伸ばせば島原エリアに行けますが、島原なんか素敵なまちの風情が残っていますし。もっと西の方にも商店街が続いていて、「ボークス ホビースクエア京都」(※1)とか面白いところがたくさんあるんですよ。どんどんそういう場所を発掘して、お客様に回遊してもらいたいですね。

特に夜観光。海外でもよくありますが、ナイトマーケットみたいなことができないか。今オーバーツーリズムが課題になっていて、時間・季節・場所を分散させようとしているんです。「時間」で言えば、朝と夜への分散を、「季節」では夏と冬への分散を狙っています。

※1「ボークス ホビースクエア京都」:模型やフィギュアを中心に扱い、京都に本社を置く株式会社ボークスの京都最大級の店舗。https://www.volks.co.jp/jp/shop/kyoto_hs/

──冒頭でも少しお話しいただいていましたが、新たな取り組みへの支援にも注力されているのですね。

昨日9月23日に大丸京都店さんで開催されていた「注文をまちがえるリストランテ」(※1)など、そういう取り組みも引き続き支援していきたいと思っています。高齢化社会になれば認知症の方が増えるのは分かっていることですし、そういう方々も社会参加ができて、私たちもそういう方への理解を深められるイベントは必要だと思いますね。昨日は300人くらいの方に来ていただいたのですが、「ちょっとくらい注文なんて間違ってもいいじゃない」と思ってくださるような、そういう方ばかりでしたね。午後3時から6時という一番お客様が少なくなる時間帯にも関わらず、たった3時間で300人ですよ。温かい空気が流れていましたね。

※1「注文をまちがえるリストランテ」:認知症を抱える方がカフェやレストランでお客様をもてなすことを通じて、認知症を抱える方とそうでない方との理解促進を目指すイベント。京都市の市民グループ「まぁいいかlaboきょうと」を中心に開催。

──今後については、何か取り組みたいことはありますか?

現在力を入れていることに加えて、今後はソーシャルグッドな取り組みを広めていきたいと考えています。前職でソーシャルイノベーションを担当していたこともあり、「イケウチオーガニック」(※1)や「Dari K(ダリケー)」(※2)、「MOTHERHOUSE(マザーハウス)」(※3)などソーシャルベンチャーの皆さんとつながって、社会課題を生まない未来を作っていきたいですね。

「sisam工房」(※4)の提唱する、「What you buy is what you vote(お買い物とは、どんな社会に一票を投じるかということ。)」の理念を広めていけたら、と考えています。

※1「イケウチオーガニック」:愛媛県今治市のタオルブランド。世界最高水準の安全テストをクリアし、風力発電100%の最小限の環境負荷で作られるオーガニックタオルを製造・販売する。https://www.ikeuchi.org/

※2「Dari K」:インドネシアの最高品質のカカオ豆の調達から、チョコレート製造までをすべて自社で行う京都発のチョコレート専門店。https://www.dari-k.com/

※3「MOTHERHOUSE」:2006年に設立された京都発のブランド。一つ一つ手作りで、地球にやさしい素材を使ったバングラデシュ産のバッグをメインに商品展開している。https://www.mother-house.jp/

※4「sisam工房」:京阪神や東京、オンラインで店舗を展開する、京都発のフェアトレードショップ。作り手、売り手、買い手、社会、地球環境の「五方良し」を目指した商品やサービスを広めることで、社会課題の解決を目指す。https://sisam.jp/

──では、現在特に注目されている活動や人物はいますか?

そうですね、シモヒガ140が頑張ってくれていると思いますね。

──先日は菊浜学区で盆踊りを実施されていましたね。

実は地元主催の盆踊りは菊浜学区ではなかったのですが、若い人がやるならと、地元の方々がものすごく協力的で。実現できたのはとても嬉しかったです。シモヒガ140のメンバーがいつも高瀬川の清掃をしてくれていて、地元の方はそうした真摯な姿を見ていたからこそ、彼らだったら応援してあげようと思ってくださったのかもしれないですね。もしそれがどんな人か全然分からないような人であれば、普通は受け入れてくれないですよ。

元お茶屋建築をリノベしたコリビング施設、UNKNOWN KYOTO(※1)もこの秋にはオープンしますし、この地域からは目が離せませんね。自分たちのまちを自分たちで良くしていこうとする動きは今後も応援したいですね。

※1「UNKNOWN KYOTO」:2019年秋にオープン予定、元お茶屋建築をリノベーションした五条楽園の複合施設。京都のお茶屋建築の持つ風情を味わいながら、宿泊施設、レストラン、コワーキングスペースとして利用することができる。https://unknown.kyoto/

──その他には注目されている団体・人はいますか?

東についてはシモヒガ140ですが、西はitonowaの方々を中心とした動きに注目しています。京都国際映画祭では、元淳風小学校や嶋原商店街を舞台に参加型のワークショップやパレードなどを下京区140周年記念事業として展開していただきます。

また、この前は、下京区の東と西のエリアでそれぞれおもしろいことをしている人たちに声をかけて「下京区交流会」がマールカフェで開催されました。まさに類は友よ呼ぶですね。東と西が融合した歴史的な瞬間に立ち会えてワクワクしました。これからも街を元気にする動きは応援していきたいですね。

──やはり下京区の中でも、それぞれの地域の特色は異なりますか?

違いますね。
お互いに違う特色を持ちながら、点と点をつなげるように個々で活動されている方を結べたら、相乗効果で、面白い化学反応が起きるんじゃないかなと思っていて。そうやって、どんどん面白い動きを下京区で創出していくこと、それにやりがいを感じています。

芸大生ともかなり繋がりができてきました。市営住宅の一角に、作家さんのアトリエ「市営住宅第32棟美術室」が開設。今は4人が入居して、創作活動を通じて地域との交流を深めてくれています。

─伝統的なところも新しいところもごちゃ混ぜになっている面白さが、下京区の魅力かもしれないですね。

伝統産業の事業者の方にもたくさん知り合いがいるので、下京区の違った一面もアピールしていきたいんです。下京区って商業施設ばっかりが集積しているイメージでしょう?

──そうですね、新しくておしゃれなお店が多いイメージがあります。

でも実は、伝統産業のまちでもあるんですよ。そういうことをアピールできるイベントをまた今度実施する予定です。漆芸家の下出祐太郎先生や神鏡で有名な山本合金製作所の山本晃久さんらをお招きして、伝統工芸の未来を語っていただく予定です。

東西両本願寺があるので、そういう仏具系の職人の方も多いですね。北の方は染めものに関わる仕事の方が多いです。お祭りも北の方は祇園祭ですし、南は伏見稲荷大社、西は松尾大社と、地域の方々はみなさんお祭りをとても大切にされていますね。

今、盆踊りもブームが来ているみたいですね。8月に開催された佛光寺の盆踊りには外国人の方もいらっしゃってましたね。ゲストハウスに泊まっていた方々が何をやっているんだろうって出てきて、一緒になって踊っていました。Bon Danceを通じて、世代も国籍も超えて一つになるっていいと思いませんか。

──なかなかあんな経験って普段できないですよね。

一体感があって、良いと思いますね。

続いて、安河内さんから見た京都の魅力や、京都でのインバウンド状況についてお伺いしました。

──それでは、区長にとっての京都の魅力とは何でしょうか?

僕はそもそも東京出身で、育ちが大阪、大学が西宮で・・・京都は全然関係なかったんですよね(笑)

──京都に来たきっかけは何でしたか?

就職ですね。どちらかというと昔は京都が好きにはなれなくて(笑)京都の大学にも受かったのですが、結局行きませんでした。でもなぜか就職は京都でして、京都に住んで働いているうちにだんだんと居心地が良くなってきたんです。

東京や大阪よりもサイズ感がちょうどいいですね。自転車があればどこにでも行けて、少し走れば自然に親しむことができて。都会の中を鴨川っていう清流が流れていますし。きっちりした都市計画で線引きされていないからなのか、住宅街の中に突然お洒落なお店があったりして、異なるものが共存しているところが面白いですね。

──繁華街の中でも、古いお店と新しいお店が共存していて、面白いですよね。

そうですよね。
20年ぶりくらいに、ふと寺町二条の「トラモント」というイタ飯屋さんを覗いたのですが、当時食べていたカルボナーラが懐かしくて美味しくて。マスターももうご高齢なのですが、元気にフライパンを振っておられました。そういうふうに地域から愛されているお店が京都にはたくさんありますよね。「とっておきの京都」というか、「自分だけの京都」というか。自分たちだけの物語がそれぞれあるんでしょうね。奥が深すぎて、きりがないです。

──京都にはそういうこじんまりとした良いお店が多いですよね。

そういうステレオタイプ的ではない「本当の京都」は、観光客の方にはあまり知られていないですよね。観光客は金閣寺、銀閣寺、清水寺、伏見稲荷大社など有名なところばかりに訪れているけど、本当は実は隠れたところがたくさんあって・・・。大原や高雄、京北なども魅力的ですし、山科にも素敵なところがたくさんあるのに、観光客の方はあまり行かれないんですよね。でも、リピーターの方もどんどん増えているので、もっと魅力をアピールしていけば、いずれそういうところが注目を集めるようになると思いますね。

──この間は五条の「サウナの梅湯」(※1)さんにも、外国人の方がいるのを見かけましたね。

観光客の方も、そういう地元の人の日常の生活に触れたいんだと思います。確かに僕たちも旅行に行けば、観光地だけではなくて、地元の人たちが普段使いしているところに行きたいと思ったりしますよね。でも一方で、そこで地元の方との軋轢が生じるんですよね。観光客の方が地元の方の生活圏にどんどん入っていくことになるので。

錦市場もすごい賑わいですが、「京の台所」が外国人観光客ばかり、食べ歩きされている方ばかりになってしまっていますし。これに対しては商店街の方もかなり危機感を感じておられます。賑わっているだけでは単なる雑踏でしかないと。

※1「サウナの梅湯」:五条楽園エリアに明治時代に創業した老舗の銭湯。2015年にリニューアルオープンし、地域の方々や学生、観光客で賑わう。

──最近は特に、外からの資本が錦市場に入り込んできている印象を受けますね。

そこを守っていかないと、錦らしさが失われてしまいますね。四条、新京極、寺町、河原町辺りは多様なものが入ってきても、それはそれで良いんだと思います。でも「京の台所」としての錦らしさは守っていかないと、せっかくの特徴や魅力がなくなってしまうのではないのでしょうか。商店街の皆さんも錦市場出店時のルールを作るなど懸命に努力されてますし、何とか応援していきたいですね。

──訪日外国人の話が出ましたが、現在下京区でのインバウンドの動向はいかがでしょうか?何か取り組まれていることはありますか?

京都市の観光総合調査によると、全国的にはアジアの訪日外国人の方が多い一方で、京都には欧米の方が増えているそうですね。そういう伝統や文化を理解したいと思って来てくださる人たちを大切に受け入れていきたいと思っています。

でも、中には祇園で舞妓さんの裾を引っ張ったり、個人の敷地に入って写真を撮ったりという問題も起こっていますよね。それに対しては、多言語表示で看板を立てたり、トリップアドバイザーと連携してマナーをお知らせするチラシを作ったりして啓発活動に努めています。

──地元の方の思いを汲み取りながら、どのように外国人の方を受け入れていくかが問題ですね。

決して全員マナーが悪いわけではないのだと思いますし、ゲストハウスでも優良な施設はたくさんあります。地域活動にすごく協力してくださる施設もあります。そういうところを表彰する制度もできていて、下京区からもいくつか推薦しています。例えば開智学区では分散型ホテルの「ENSO ANGO(エンソウ アンゴ)」(※1)さんも夏祭りのときにすごく協力してくださいました。地域の皆さんとっても喜んでおられましたね。

※1「ENSO ANGO」:四条通りと五条通りに挟まれたエリアに5棟点在する分散型ホテル。暮らすように泊まりながら、京都の伝統文化体験も楽しむことができる。https://ensoango.com/

──最近は宿泊施設を建てるための工事が多いですよね。

住民のみなさんもすごく危機感を持っているんです。まだマンションであれば、そこに人が住むので、地域活動の担い手になってくれる可能性がありますが。ゲストハウスでは人が住まないので、自治会費は払ってくれたとしても、活動の担い手にはならないんですよね。そういう意味でも、ENSO ANGOさんの取組は模範になると思います。

──増えている訪日外国人の方に対して、よく思っていない方もやはり多いですよね。

地元の皆さんの立場に立ってみれば、そうかもしれないですよね。ある日隣にゲストハウスができて、外国人の方が夜中にガラガラとスーツケースを引いてくるようになって、場所が分からないといって頻繁にインターホンを押されたりしたら、誰でも嫌だと思います。

でも今、違法民泊はかなり厳しく取り締まっていて、京都市全体で通報のあった2,540施設のうち99%にあたる2,513施設は営業中止に追い込んでいます。周囲に悪い影響を与える悪質な施設は徹底的に取り締まって、地域と調和のとれた優良な民泊をどんどん奨励していくことが必要だと思います。

──ENSO ANGOさんも、分散型ホテルということで面白いですよね。

今では単に泊まるだけではなくて、体験型のメニューも人気みたいですね。組紐を作ったり、和ろうそくの絵付けをしたりお茶の体験をしたり。これからはそういう体験型が人気になってくるのかもしれないですね。「京都工房コンシェルジュ」(※1)を前の仕事のときに作ったのですが、これは京都の工房とそこに見学や体験がしたい方の間をつなぐサービスで。工房訪問したい方が申し込みをすると、一定の料金で色々な体験ができるのですが、かなり人気ですね。外国人の利用率が圧倒的に高くて。

※1「京都工房コンシェルジュ」:京都の伝統産業を見学・体験できる工房紹介専門サイト。https://www.kyotoartisans.jp/

──それでは、区長は今後下京区を含め、京都をどのようなまちにしていきたいと思いますか?区長にとっての理想の京都の姿はどのようなものですか?

東京とは違う価値観でまちづくりを進められるのが京都だと思うんですよね。効率とか経済中心に動くのではなく、昔からの伝統を重んじながら、新しいことに挑戦する。「進取の気風」とよく言いますが、そういう精神が根付いているまちですね。京セラ、オムロンを始めベンチャー企業も多いでしょう。そういうところが魅力になって、現在世界中から様々な企業が進出してきていますよね。パナソニックのデザインセンターも四条新町にできましたし、LINEも京都にオフィスができましたよね。

──ラデュレも四条通りにオープンしましたし、今後はエースホテルやフォションのホテルもオープン予定だそうですね。

そういう吸引力があるんでしょうね。だから最近は京都でプレスリリースする企業も多いです。「東京発」より「京都発」の方が、企業の持つ理念や思いが伝わりやすいんでしょうね。その京都ブランドを損なわないように大切にしながら、どう持続可能なまちをつくるかということが大切になっていくと思います。

京都らしさが失われないように、新景観政策という形で大胆な高さ規制や屋外広告物などの景観規制も導入しましたが、普通ならありえないですよね。不動産の利用価値をそれだけ制限することになるので。でも思い切ってそれを実行したのが正解だったんだと思います。それでかえって観光客の方が増えて、観光客も5000万人突破して、観光消費が1兆3000億ですね。ただ、混雑していて日本人の観光客が少し減ってしまっていることは課題だと思います。

──効率や経済を最優先にしないことで、かえって京都のまちに魅力が生まれている気がしますね。

叱られるかもしれないけど大阪的な発想なら、駅近の芸大の用地なんかはデベロッパーにまかせて、商業開発したかもしれません。それを、大学にするというのが京都らしい。文化・芸術の力でまちを活性化させるというか、それがいかにも京都的だなと。

──京都に住んでいる方も、そういう京都らしさを誇りに思っているような雰囲気がありますね。

そうですね。
京都芸大の移転については、下京区のすべての自治連合会から賛同する要望書もいただきました。ただ、今は地価が高騰して若い世帯が京都市内に住めなくなって、滋賀県や京都府南部など周辺の地域に転出する方が多いので、それが課題です。今は土地が出ても、マンションとホテルの取り合いになって、結局はホテルが取得するという話を聞きます。マンションを作れたとしても価格が高くなりすぎてなかなか若い世帯には手が出せない・・・。そういう都市政策全体について、考えないといけないと思います。

──そもそも京都はそんなに広いわけでもありませんしね。西のほうや郊外に行けば土地もありますが。

そうですね、下京区でも西の方のエリアではファミリー向けのマンション、住宅も増え、子育て世帯も増えています。

──京都に住むなら、おすすめの地域はありますか?

そうですね・・・五条界隈も良いですが、毎日夜お酒を飲みに通いそうですね(笑)梅小路京都西駅の近くも面白いし、KAGAN HOTELもものすごく素敵だし。「バーベキューコート339(サザンガキュウ)」(※1)もありますね。その他にも南区には「Theatre E9 Kyoto」(※2)があったりと、下京区はどこも面白いエリアだらけですね。

※1「バーベキューコート339」:京都中央市場横の冷凍倉庫跡にある、京都市内最大級のバーベキュー場。https://bbq.339.co.jp/

※2「Theatre E9 Kyoto」:2階建ての元倉庫をリノベーションして、2019年6月に九条河原町にオープンした小劇場。作品の上演だけではなく、レクチャーやワークショップの実施を通じて、人々が集い交流できる場作りを目指す。https://askyoto.or.jp/e9

──南区など他の区と連携して活動されることはありますか?

文化を基軸としたまちづくりをしていくために、連携したいと思ってます。行政区の違いは関係なく、崇仁エリアも南区のエリアとつながっていくわけなので。東に行けば、京都美術工芸大学や三十三間堂、京都国立博物館をはじめとする文化ゾーンとも繋がっている。まさに「文化の十字路」なんですね。他の行政区とも連携していこうとしています。

──他のエリアとも連携しながら盛り上がっていけば、ますます外国人の方も増えそうですね。

京都駅から南に道路を挟んで向こう側からが南区なのですが、あの辺りには韓国料理屋さんやお好み屋さんもありますし、面白いところはたくさんあるので・・・。

──京都駅の近くにも、知られていない良いお店がまだまだありそうですね。

「Traveling Coffee(トラベリングコーヒー)」(※1)を運営されている牧野さんがずっとコラムを書いておられるのですが、「下町。」というシリーズで、これまでにもいくつか投稿されていましたね。そこで崇仁や東九条界隈の人情味あふれるお店を紹介されているのですが、大ファンなんですよ。参考にさせていただいてます。

※1「Traveling Coffee」:立誠小学校の元職員室で営業するコーヒーショップ。昭和初期に作られた校舎のレトロな雰囲気の中で、コーヒーを楽しむことができる。

最後に、下京区140周年に関連して実施されているイベントや企画についてお話しいただきました。

──今、インスタグラムでもシモヒガ140さんがリレー形式でお店を紹介する企画をされていますよね。

下京区にある魅力的な店舗をバトン形式で紹介しながらおもしろい繋がりができればと始まった企画でして、僕の投稿をスタートにバトンを渡していきました。「糸ちゃん」という崇仁エリアにあるお好み焼き屋さんを一番初めに紹介しましたね。お店紹介をつないでいって、140店舗を目指そうとしています。

──今何店舗目くらいですか?

5~60は繋がってるんじゃないでしょうか。#シモヒガ140バトンで検索してみてください。それらをまとめて紹介したら素敵だと。そういう活動も自発的にシモヒガ140でしてくれていて、面白いなと思っています。下京東部エリアの学区を順次紹介するシモヒガ140新聞も発行されてますし、公式行事じゃないのですが、「菊浜学区をあそぼう!」っていう14時間ぶっ通しでの企画もやってくれてね。今度は「24時間鍋!下京区140周年を祝って」や140時間ぶっ通しでの企画を考えているみたいですよ(笑)

──それはすごいですね(笑)今、下京区は動きも活発なので、Sharing Kyotoとしても注目していけたらと考えています。

ぜひぜひお願いします。
「Power of Light しもぎょう伝燈祭~夢・希望・未来~」にも来てくださいね。これは140周年のメイン事業の一つなんです。下京区はお寺が多いので、そこから使用済みの和ろうそくをいただいて。使用済みといっても少ししか使っていないので、それを溶かしてキャンドル作って、夜の梅小路公園に3000本ほど灯す予定です。京都議定書誕生の地・京都から地球環境について考えようというイベントで、下京区の新たな風物詩にしていきたいと思っています。

先ほどお話しした市営住宅第32棟美術室の皆さんが、今回デザインイメージを手伝ってくださっています。水族館の魚たちが円を描いて、自然、循環を表現しています。あと「朱雀の庭」という池のあるエリアにもろうそくを灯す予定です。ワークショップを6回実施して、シェードの部分に子どもたちが絵を書いてくれて。3000本の和ろうそくが灯った光景は圧巻だと思いますので、ぜひお越しください。

──自分の描いたものを探すのも楽しそうですね!

3000個の中から見つけるのは大変ですけど(笑)マルシェやキッチンカーも出す予定ですし、幻想的な雰囲気の音楽もかけられたらと思っています。その日は、毎年行っている「下京ふれ愛ひろば」というイベントを12時から4時にかけて実施して、それから5時に伝燈祭を始めるんです。

──サポートスタッフは10月4日まで募集されているんですね。

火を3000個つけて並べるのは大変ですからね(笑)ろうそくは2時間でちょうど消える設定なので、火を消すほうは大丈夫なんですけど。サポートスタッフのお申し出はいつでも大歓迎です。

──下京区140周年に関連したイベントは他にも何か実施されますか?

今、区庁舎前の木が植わっているところを、インスタ映えするスポットに変えようとしていますね。どんな風になるかお楽しみに。あとは、11月24日の記念式典。これが140周年記念のフィナーレみたいなものです。でもこれも普通の式典ではなくて、面白いことを企画していますよ。

そうそう、太田胃散さんもちょうど140周年で、この間は「太田胃にゃんの下京区はんなり探訪」っていう動画も作ってくださいましたね。僕が「Kyoto Beer Lab(京都ビアラボ)」(※1)で飲んでいるところに太田胃散のマスコットキャラクター「太田胃にゃん」が来て、太田胃散を持って来てくれて、そこから下京区の面白いスポットを動画で紹介していくという(笑)

※1「Kyoto Beer Lab」: 2018年3月オープン、七条河原町にあるブリューパブ。和束町で生産された茶葉を使った「和束茶ビール」など、京都らしい個性的なビールが飲める。http://kyotobeerlab.jp/

──面白いですね。でも太田胃散さんって京都の会社ではないですよね?

そうですね、違います。
それでも様々な企業がコラボしてくださるのはありがたい限りです。今度は京都タワーのマスコットキャラクター「たわわちゃん」とコラボしたり、水族館にも行ったりするそうですよ。

──そういう面白い企画も、人とのつながりで生まれてくるんですね。

「今年は下京区140周年だしなんかやろうよ」とあちこちに呼びかけていたら、多くの方々がそれに呼応してくれました。ありがたい話です。そういう人とのつながりで生まれてくる企画が下京区は多い気がしますね。

KAGAN HOTELの周りでもそういうネットワークができていますし、やはり類は友を呼ぶで、感度の高い方、志のある方が自然と集まってくるのかもしれません。

 

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今回のインタビューでは、区長としてのお仕事を通じて大切にされていることや目指されていること、下京区と京都のまちの魅力、今後の京都の理想の姿などについてお話しいただきました。

下京区は新駅の開業、京都市立芸術大学の移転などの大きな動きだけではなく、若手を中心に様々な新たな取り組みも生まれる、今大注目のエリアです。自治会活動など、従来の伝統や文化を持続させながら、一方で新しい取り組みも推進していく両輪の施策で、今後もますます魅力的なエリアになっていって欲しいと思います!

▼「Power of Light しもぎょう伝燈祭~夢・希望・未来~」の詳細についてはこちら
https://www.city.kyoto.lg.jp/shimogyo/page/0000257291.html

 

 

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