島袋 圭太
烏丸六角ディレクション研究会
島袋 圭太
2018/10/03

IPA IT活用ビジネスアイデアソン 参加メモ

IPA IT活用ビジネスアイデアソン 参加メモ

台風24号が近付く週末。雨ニモ負ケズ二日酔ヒニモ負けヌ丈夫ナ体デ電車を乗り継ぎ京都から大阪・南港ATCへ。

とあるテーマからビジネスアイデアを創り上げるイベント(アイデアソン)に参加してきました。


アイデアソンとは

「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語。様々なバックグラウンドの人たちが集まり、チームを組んでサービスやプロダクトのプランニングを行うもの(「モノを作らないハッカソン」みたいなイメージでしょうか)。


『IPA IT活用ビジネスアイデアソン』

今回のアイデアソンは、主に起業を目指す人たちをターゲットにしたイベントで、「ビジネスプラン」に必要なメソッドを体験することに重きが置かれた内容でした。

ビジネスプランの優劣を競うようなものではなく「学び」に重きが置かれていて、プレゼンしたビジネスプランについては、審査員からフィードバックがもらえます。審査員は、『QOOBO』『BOCCO』でお馴染みのユカイ工学の青木さん。


 ▽ IPA IT活用ビジネスアイデアソン
 https://www.ipa-ideathon.com/
 10月に函館・福岡・東京でも実施予定。


テーマは、「スポーツ」「インバウンド」「ヘルスケア」。この3つの中からテーマを選び、課題解決のビジネスアイデアを時間内に創り上げます。


主催:IPA / HackCamp

● 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

経済産業省所管の独立行政法人。
主な事業内容は、情報セキュリティ対策の強化や、優れたIT人材の育成。起業家支援の様々アクセレーションプログラムを提供しています。


● HackCamp

https://hackcamp.jp/
“株式会社HackCampは「内部と外部のアイデアやテクノロジーを有機的に結合させ、新しい価値を創造する」”Co-Creative”をキーワードに、新規事業開発、イノベーション人材育成、ハッカソン・アイデアソン・ビジコン等のイベント企画・運営をサポートする、 イノベーションプロデュースカンパニー”(※サイトより抜粋)

オープンイノベーション系のイベントと言えばすぐに想起される会社。


● ファシリテーター:田中直史(たなかなおぶみ)氏

ITベンチャーやYahoo!、楽天などを経て株式会社ラストワンマイルを創業。リノベーション&シェアリングビジネスプロデューサー。

 ▽株式会社ラストワンマイル
 https://www.lastonemile.co.jp/

今回のアイデアソンは、様々なメソッドを体験する山盛りな内容でしたが、田中さんのスピード感を保ちつつ参加者が置いていかれないよう配慮の行き届いた進行で、何とか最後まで走り切ることができました。


イベント参加者

参加人数は20名弱。主なバックグラウンドは以下の通り。
 ・エンジニア(Web、製造メーカー etc)
 ・起業家・個人事業主
 ・学生
 ・総務 など

個人的には、エンジニア比率が高いことがとても印象的でした。
私のイメージだと、モノ作りが前提のハッカソンやハンズオンにはエンジニアが多い一方で、こういうビジネスプラン系のイベントへの参加は消極的なイメージがありました。
みなさんの自己紹介を聞いていると、会社で「新しいことをしないと!」という機運が高まっている中で、とは言え何からどう手を付けていいか分からず、このイベントで何かヒントを得たいというモチベーションの方が多かったように思います。


当日のスケジュール

以下を11:00~18:30で実施するという、かなり山盛りな内容(!)


(1) イントロダクション・アイスブレイク、チームビルディング
(2) アイデア発散・収束フェーズ
(3) ブラッシュアップフェーズ
(4) ビジネス設計フェーズ
(5) ユカイ工学・青木さん、IPAさんからのお話し
(6) プレゼン&フィードバック


アイスブレイク

かけ算ストーミング。縦軸と横軸にキーワードをおき、掛け合わされる箇所にアイデアを書き込んでいきます。
横軸は今回のテーマ(スポーツ/インバウンド/ヘルスケア)。縦軸は身の回りにあるものやぱっと思いついたものを書き込みます。

縦軸の気になったもの。ビール/ブログ/コンビニ。ヘルスケア×コンビニの「カロリーが分かるレシート」はお気に入り。
縦軸の気になったもの。ビール/ブログ/コンビニ。ヘルスケア×コンビニの「カロリーが分かるレシート」はお気に入り。

アイデア発散・収束フェーズ

● ゼブラブレスト

個人とグループ交互で発想し、アイデアを生み出す手法。まずは一人でアイデアを考える → グループに共有・FB → 再度一人で検討 → 再度グループに共有し良案を発掘。

この「ゼブラブレスト」。個人的に新しい発見がありました。

メンバーへの共有・フィードバックが一通り終わった雑談の中で何となくひっかかるワードがあり、それをママ紙に書き起こしたところ採用。
自分トリガーのアイデアではないため特にテンションは上がらなかったのですが(笑)、ブラッシュアップしていく過程の中で、メンバー全員がアイデアに思い入れを抱くようになり、いつの間にか“みんなのビジネスプラン”になっていました(集合知とはこういうことを言うのか...)。


● アイデアスケッチ / アイデア選定

ゼブラブレストを経て、全員でアイデアをA4・1枚の紙に書き起こします。チーム内で良いと思ったアイデアに星印を付けて、星が一番多いアイデアをベースにこの後の検討を進めます。


ブラッシュアップフェーズ

● PPCO

主に3つのことを行います。


「PP」Plus Potential

潜在可能性の列挙。とにかく褒める。褒めまくる。


「C」Concern

次に懸念点を挙げる。“そもそも”観点やちょっと気になること、何でもOK(逆に懸念点はここで出し切る)。出てきたものに優先度を付け、上位3位の懸念点を導き出し、次のフェーズではこの3点に絞った解決策を検討する。

懸念点を絞るのには意味があって、リソースが限られている中で全ての懸念点を潰すのは無理なこと。優先度の高い懸念点(=本質的な懸念点)を潰せば、他のものも芋づる式に解消される可能性があるため。


「O」Overcome

懸念点の対策案を検討する。

奥のピンク色のふせん。他の2つに比べると数が少ない...;汗
奥のピンク色のふせん。他の2つに比べると数が少ない...;汗


このメソッドもとても気付きの多いものでした。

Plus Potentialのフェーズなのに、ついつい「懸念点」のことを考えてしまう。せっかく出始めた可能性も「結局上手くいかないので出す意味ないな」となり、時間だけが過ぎてアウトプットはゼロ。結果、以降の検討が尻すぼみになってしまう。みたいな。

「懸念は後!今は褒めまくるフェーズ!」と途中何度も軌道修正を行い、なんとか3つのフェーズを終了。
この過程の中で、自分たちの出したアイデアの新しい魅力の再発見と、メンバー間でアイデアの詳細な認識の摺り合わせができたように感じます。


● アイデアスケッチ

前出のアイデアスケッチを再度ブラッシュアップ。

何回かのブラッシュアップを経て、結果、当初考えていたプラントは違った内容になりました。


● 体験スケッチボード / アイデアピッチ

「体験スケッチボード」は、利用者目線で、このサービスを利用してユーザーがどういう気分になるのか・どういう体験をするのか、関係者はどう行動するのか、その体験を成り立たせるためのサービス・コンテンツはどういったものなのかを明示化します。

さらに、「アイデアピッチ」に整理することで、ターゲットユーザー、解決する課題、提供価値が整理されていきます。


これらのメソッドを活用することで、自分たちの考えたビジネスアイデアを客観視することができます。


ビジネス設計フェーズ

アイデアのかたちが見えてき始めたところで、次に「ビジネス観点」でそれらがイケているのかそうじゃないのか、チェックをします。


● リーンキャンバス / ビジネスモデルキャンバス

ビジネスプランの全容を紙1枚に整理するメソッド。

手前が「リーンキャンパス」
手前が「リーンキャンパス」

ポイントは、右上の「顧客」から始まること。

リーンキャンパスはちょうど1年前にとあるワークショップで体験していたのですが、改めて取り組んでいて、かなり有効なメソッドであることを再認識しました。
顧客は?コアコンピタンスは?収益はどう上げる?といった、ビジネスを考えるうえで押さえておくべきポイントを抜け漏れ無くテーブルに挙げることができます。


ユカイ工学・青木さん、IPAさんからのお話し

審査員のユカイ工学代表・青木さんのお話し。会社の紹介や、ユカイ工学のアイデア創出方法など。

なんと、あの石黒先生のお弟子さん!石黒先生の教えは「不安定なものを創れ。その方がおもしろいから。」
なんと、あの石黒先生のお弟子さん!石黒先生の教えは「不安定なものを創れ。その方がおもしろいから。」

これまで青木さんが勤められていた企業は、どれも有名な企業ばかり。


チームラボ株式会社

https://www.team-lab.com/
言わずと知れたテクノロジー集団。創業当初の自社プロダクトよりも受託開発が多い時期から勤められていたとか。


ピクシブ株式会社

https://www.pixiv.net/
イラストや漫画を中心としたSNS「pixiv」で有名な会社。
創業メンバーの志向性もあり、当初から自社プロダクトで勝負。初音ミクの登場も相まって認知度も高まることに。


ユカイ工学株式会社

https://www.ux-xu.com/
ピクシブに勤める傍ら、「ロボットを作りたい」という思いで、当初は週末プロジェクトとして立ち上げ。

活動を続ける中でIPAの「未踏」に応募しその活動が認められることに。
https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/portal_index.html

資金・メンタリングなどサポート受けていく中で社会的認知度も上がり、2011年にピクシブから独立。ユカイ工学を本格的に立ち上げ。

BOCCOはハッカソン界隈ではお馴染みプロダクト。
BOCCOはハッカソン界隈ではお馴染みプロダクト。

心を癒やす、しっぽクッション「QOOBO(クーボ)」のお話し。

QOOBOのプロジェクトメンバー
QOOBOのプロジェクトメンバー

http://qoobo.info/
撫でるとしっぽを振ってくれるクッション。撫で方によって、しっぽの振り方も変わります。

もともと社内ハッカソンで出たアイデアが基になっているとか。

社内ハッカソンで書かれたラフ
社内ハッカソンで書かれたラフ

開発は進めるものの、まだ世に無い商品だったため、マーケットがどういう反応をするのか不安。エンジェル投資家に相談するも「大ゴケしない程度にやってみたら?」という気のない返事(※意訳)。

マーケットに出す前に、一度このプロダクトを世に問うてみようと、展示会へ出展することに。

選んだ展示会は、IT・エレクトロニクス系で最先端の技術や製品が出展する国際展示会「CEATEC(シーテック)」。

CEATEC(シーテック)での反応は上々!『Gadget Nation賞』も受賞。審査員がデモ機を海外へ持ち帰ったことがきっかけで、数々の海外メディアにも取り上げられました。

海外で話題になっていく中で発見も。

高齢者の施設でQOOBOを使ってもらったところ、お爺ちゃん・お婆ちゃんは大喜び。
施設というペットが飼えない環境や、アレルギーなどの理由でペットに触れられない。一方で、癒しやスキンシップへのニーズはあって、そこにQOOBOはぴたりとハマった。


これでマーケットに受け入れられる目途がたち、クラウドファンディングへ。
資金も順調に集まり、とうとう量産体制が組めるまでに。


「QOOBO」の他にも、「BOCCO」や、少し前には脳波で動くネコミミ「necomimi」など、オリジナル性の高いプロダクトを生み出してきたユカイ工学。

同社のプロダクトデザインの手法についても、お話しが聞けました。

似たような文脈で話されることが多い3つのキーワードについて、キカイ工学的定義。
似たような文脈で話されることが多い3つのキーワードについて、キカイ工学的定義。

「アート」は気になることの掘り下げ。何かの課題を解決するものではなく、課題を抽出するもの。
実はこの課題は何万年も前から変わっていない、普遍的なもの(病気で命を落としちゃうとか、奥さんに怒られるのが怖いとか)。
一方、その解決手段であるテクノロジーは日々進化を続けている。
課題のうち、テクノロジーでカバーできる領域が増えている。

この、課題とテクノロジーの接点が『ビジネス』。

社会の変化はテクノロジーの進化によってもたらされるもの。「いま何が変わっているのか」は知っておいた方がいいし、そういう意味でもテクノロジーの変化には敏感でいた方がいいよ、というお話し。

さらっと仰っていましたが、いろいろなヒントや示唆に富むお話しでした。

最後にIPAさんから「未踏」のご紹介も。
最後にIPAさんから「未踏」のご紹介も。

プレゼン&フィードバック

全4チームからビジネスアイデアのプレゼン。
それぞれ丁寧なフィードバックがいただけました。


まとめ

今回のイベントでは大きく3つの発見がありました。


●「独りだけ」の限界と「全員だけ」の限界

前出の「ゼブラブレスト」。個人とチームとの交互で発想するメソッドですが、とても気付きの多いものでした。
個人で考えても発想の幅は小さく、深みのないものになる。一方チーム全員で考え過ぎても発散に偏ったり、上手く個々人の脳内リソースを使えなかったりする。
そこに「ゼブラブレスト」の手法を使えば、全員の知見をフル活用しつつアイデアが深められることを実感しました。


●「変わる」前提のスタンスに立つことの重要性

上記と関わるのですが、議論を重ねる中で当然考えていることも変わる。
この「変わる」ということに対してネガティブな自分がいることに気付きました。
議論の中で「お、それいいねー」となると、「あれ?ターゲット変わってない?」とか「そもそも根本から考え直す必要ない?」という思いが芽生え、何となく議論を収束させようとしがち。
でも今回のアイデアソンでは、議論を重ね、プランをピボットすることで、全員の気持ちが1つになったし、プランとしても良くなったように感じました。
人間誰しも変わることに拒否感があるとはいいますが、まずはそのことを捉え、そのうえでそれを乗り越える意識付けが必要だなぁと自戒。


● 最新のテクノロジーに触れる重要性

個人的に“参加型”のイベントが好きで(その方が何かしらスキルや経験が持ち帰れるような気がするので)、あまり最新のテクノロジーを知るようなイベントには参加していませんでした。
ただ、今回青木さんのお話しを聞いて、単なる情報収集ではなく、そのテクノロジーが解決している課題(と、そのコンテキスト上にある別の課題)に思いを馳せつつ、社会がどう変わっていこうとしているのかに意識を向ける重要性を感じました。



起業支援を生業とされているIPAさんには申し訳ないくらい「起業」とは関係のないまとめになってしまいましたが(笑)、サラリーマンの私でもたくさんの気付きのある貴重なイベントでした。IPAさん、HackCampさん、田中さん、青木さんに感謝です!

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